奥歯がないと太りやすい!?それほんと?

皆さんは、どんな食べ物がお好きですか?また、普段よくどんなものを食べていますか?

 

なぜその食べ物が好きかと聞かれると、「おいしいから」「香りが良いから」「食感が好き」というような回答が得られそうなものですが、

なぜそれをよく食べるのかと聞かれると、「おいしいから」「安いから」「食べやすいから」「栄養に良いから」などの回答があるのではないかと思います。

奥歯でしっかり噛んで食べるということ

「食べやすいから」というのは実は非常に重要です。なぜなら、奥歯がない方はあまり噛まなくても食べられる柔らかい食事を好む傾向にあるからです。奥歯を失ってよく噛めない状態は、本来とても強いストレスを生みます。その結果、ストレスを感じずに食べられる柔らかい食事を自然と好むようになり、食生活の中心は、うどんやラーメンなどの麺類や柔らかいお米になっていくのです。

 これらは、あまり噛まなくてもすすって流し込めるので、噛めないストレスをほとんど感じずに食べることができますが、糖質が豊富でカロリーオーバーになりやすい一方、筋肉量の維持に必要な動物性タンパク質や、老化を防ぎ体調を整える抗酸化物質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが乏しく、深刻な栄養不足を招きやすいのです。肥満につながりやすいうえ、低タンパク質で筋肉が減ってしまうのでは、むしろ健康増進には逆効果ですが、現実に噛めないものが多くては、栄養改善は難しいのです。

 奥歯を失って食べにくくなるものの代表格が肉と野菜です。これらには、先ほどの動物性タンパク質や、抗酸化物質、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。

 健康維持に必要な1日分のタンパク質は、適正体重(身長(m)×身長(m)×22)×0.001が目安。つまり、適正体重が50kgなら、毎日50gのタンパク質が最低限必要になるのです。魚、卵、乳製品などの動物性タンパク質と豆類などの植物性タンパク質をバランスよく摂るのが理想ですが、1つ例を挙げるとすると、50gのタンパク質を摂取するためには、肉1切れ(70g)、牛乳・乳製品200g、卵1個、魚1切れ(70g)、大豆・豆類(納豆1パック、豆腐1/2丁)を食べる必要があります。また、野菜については、厚生労働省の国民の健康づくり運動「健康日本21」で推奨されている1日の必要量が350gです。これは、1皿の野菜量を約70gとすると、13食で合計5皿になります。奥歯がない方がこれだけの量を噛んで毎日食べるのはかなり難しいのではないでしょうか。

 また、最近話題の「サルコペニア」ってご存知でしょうか?これは、加齢で起きる筋肉量と筋力の低下のことで、高齢者の体力や運動機能を急激に低下させ、店頭や寝たきりの原因として非常に問題視されています。よく噛めないお口は、このサルコペニアの重大なリスクとなるのです。

 摂取したタンパク質を使って効率よく筋肉量を維持するためには、野菜に豊富に含まれるビタミンやミネラルが欠かせません。前述したように、奥歯を失うと、よく噛まないと食べられない肉や野菜が苦手になる方が多いのです。年齢を重ねるほどにお口の健康がからだの健康に大きく影響することを、ぜひ知っていただきたいと思います。

 ナッツやたくあん、せんべいやステーキなどなど、奥歯がなくて食べにくい食品があるな、と感じておられる方、歯科治療でよく噛めるお口を取り戻し、健康的な身体をつくりましょう。