5人に1人!?エナメル質形成不全に迫る!

エナメル質形成不全という言葉をご存知でしょうか。簡単に言えば、歯のできが悪い状態のことですが、生まれつき、歯の中の「エナメル質」という部分が正常に作られず、変色(白、茶、黄色など)したり、形がぼこぼこしていたりといった症状が出た歯のことです。

エナメル質は、歯の1番外側にあるもので、人体の中で最も硬い組織です。これが、熱いものや冷たいもの、酸性の食品など、刺激に敏感な内部の層に触れないように保護する働きをしています。

エナメル質が正常に作られないと、歯がしみるなどの症状が出たり、前歯に変色・変形が起こると見た目が損なわれたり、むし歯の進行が早くなったりといった悪影響がでてしまうのです。

ビタミンD不足!?

日本小児歯科学会の最新調査で、軽度のお子さんも含めると、今小学1年生~2年生の約5人に1人がエナメル質形成不全だと言われています。10年程前の報告では約10人に1人であったことを考えると、最近エナメル質形成不全は急激に増加しています。

エナメル質形成不全の原因は遺伝によるものと、子どものまわりの環境によるものに大別できますが、この急激な増加の原因として特に有力な説が、お母さんのビタミンD欠乏によるエナメル質形成不全です。

ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を促進する、骨や歯の形成に欠かせない栄養素であり、これが歯の成長期である妊娠期~授乳期~離乳期に欠乏すると、うまく歯が作られず、エナメル質形成不全になってしまうのです。

実際に、授乳中のお母さんたちにご協力いただいて、母乳中のビタミンDの量を調べたデータがあります。これによると、100ccの母乳に640μgが必要とされていますが、1番多かったお母さんで80μg1番少なかったかたはわずか8μgしか含まれていなかったとのことです。

では、なぜお母さんたちのビタミンDが不足してきているのでしょうか?

私たちはビタミンDを食べ物から摂取するか、体内で合成することで補っています。ビタミンDが多く含まれるものとしては、サケやサンマなどの魚や干ししいたけなどの乾物です。これらの食材を食べない人が増えているというのが1つの原因として考えられますが、必要量の数十分の1といった重度の欠乏は、妊産婦さんはもちろん、一般的にもまず見られません。

そこで、ビタミンD欠乏の原因として最も注目されている仮説が、皮膚に紫外線があたることにより体内で合成されるビタミンDが減っている、というものです。最近は美白ブームで、顔だけでなく手足にも日焼け止めを塗り、日傘を差す、といったような紫外線対策をされているかたが非常に増えました。

過度な紫外線対策により、女性の骨粗しょう症が増えているという報告もあります。ビタミンDは骨を作るにも必要な成分だからです。

もちろん、行き過ぎた日焼けは皮膚にダメージを与えますが、徹底した紫外線対策はこのような健康被害を引き起こすということを考えると、生活習慣を見直す必要があるかもしれません。