口腔ケアでインフルエンザ予防!?

 例年、12月から3月にかけて流行するインフルエンザは、発症すると、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などの症状が急速に現れるやっかいな疾患です。特に、お子さんや高齢者、病気やその治療によって免疫が低下した患者さんにとって、生命にかかわる重篤なものとなります。

 インフルエンザにかからないために、そして、ご家族や周囲の人々にうつさないようにするためにも、しっかりと予防を心がけたいものです。インフルエンザの予防法として有名なのは、手洗い、マスクの着用、インフルエンザワクチンの摂取などがありますが、最近になって、お口の中をきれいにする(=お口の中の細菌を減らす)ことでインフルエンザの発症率が約1/10になったという報告がでています。

インフルエンザは、インフルエンザウイルスが鼻やのどの粘膜の細胞にくっつき、細胞内に侵入し、増殖することで発症しますが、このときに必要なのがプロテアーゼという酵素です。プロテアーゼは元々のど(咽頭や上気道)の粘膜の細胞に存在するので、インフルエンザはのどから発症するのです。

 歯周病菌などの口の中に存在する細菌もまた、プロテアーゼを出してしまいます。そのため、口の中に細菌が多く、プロテアーゼがたくさん存在すると、インフルエンザの発症や、重症化を招きやすくなる、というわけです。

 「私はワクチンを打ってるから大丈夫!」と思っておられる方がいらっしゃるかもしれませんが、ワクチンはインフルエンザの発病を完全に予防するものではありません。国内のワクチンの効果に対する研究をご紹介しますと、「65歳以上の高齢者施設に入所している高齢者については3455%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があった」、「6歳未満の小児を対象とした2015/16シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は60%であった」、「成人の1回摂取では、およそ50%有効であった」とされています。

 「50%って少なくない?」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、ワクチンは、ウイルスの侵入そのものを阻止できるものではなく、ウイルスが細胞に入り込み、増え始めたときにやっつける役割なので、50%防げるというのは相当素早く反応しているということです。

 つまり、手洗い、マスクの着用、そして口腔ケアでインフルエンザウイルスが侵入してくる数を減らし、入ってきたとしてもワクチンの力で発症や重症化を防ぐという、2重、3重の予防策を講ずることが重要なのです。

 口腔ケアで口の中の細菌を減らせば、インフルエンザの予防に貢献できるだけではなく、歯周病やむし歯の予防、口臭のケアなど色々なメリットがあります。この機会に、お口の中をすっきりきれいにしてみませんか?